小説の雰囲気とは

いまさらながら,色々な人が色々な概念を指して,雰囲気や印象という用語を使っているようです。

今のところ分かっているのは,
1.文体的な意味での「雰囲気」 ex.村上春樹のような書きぶりの小説とか,特定の作家,作品の持つテクスト的な側面に着目
2.読後の気分という意味での「雰囲気」 ex.明るい小説,切ない小説など,感性語での表現が可能な側面に着目
*「著者の意図」と「読者の感じる著者の意図」の両面あり。

雰囲気という言葉を使ってはいないが,想定されうる範囲としては,
3.内容的な意味での「雰囲気」 ex.下剋上をテーマとするような小説とか,ストーリーや主題とも言い換えられる側面
4.時代や設定から影響を受ける「雰囲気」 ex.昭和の雰囲気を持った懐かしい気持ちになる小説など,かなり客観性が高い側面 ジャンルともいえる。

小説に関する研究はすでに図書館学分野では長い歴史があるようですが,結局のところ一般的ではないですね。NDCでは,形式面でのみの分類のはずです(しっかりと確認はしていません。)

これらのうち,1.は著者推定の手法を用いることで,ある程度自動的な推定ができるのではないかと思われます。3.のように,ストーリーを自動的に出力したり,主題を抽出するのはかなり難しい気がします。4.については研究も多少ありますが,あまり性能は高くありません。それでも実現可能性は3.より高い気がします。2.の「著者の意図」としての雰囲気の推定に取り組んでいるのが,私なわけですが,これもなかなか難しい。読者の感じる雰囲気なんて,もはや無理か?

こう見てみると,1.と3.を組み合わせて検索できるようにするだけでも,結構面白いのでは?これからの電子書籍時代,フルテキストを解析してお客に検索手段を提供することは明らかに販促になるはずです。

修論終わって,就職してからこの課題は取り組みたいなあ。だれか一緒にやってくれないかな?お声かけ,お待ちしています。自分からも行きますが。


[補足]

近代文学研究では,著者というのは著者でしかなく,それ以外の何者でもないというのが一般的みたいですね。本当の著者の意図なんてわからないから,読者の推測の積み重ねはやめようってことなんだと思っていますが,たとえ本当の著者の意図が分かっても,それはそれでしかないとか。
まあ一方で,それはそれでいいなら,無数の読者の無数の感覚より,1人の著者の1つの正解を分類基準にした方が一貫性はありますけどね。